住宅業界と建設業界の違いとは?転職するなら知っておきたい動向
2023/11/29
住宅業界は、主に注文住宅や分譲住宅の設計・建築・販売を個人顧客向けに行う業種です。一方、建設業界は住宅だけでなく、道路や橋、ダムなどのインフラ設備を建設する業種です。住宅業界は需要減少が予測され、海外市場や省エネ住宅への展開が注目されています。これらの業界における動向を把握し、自身の転職計画に活かすことは、成功への第一歩となるでしょう。
ハウスメーカーの名前で知られる住宅業界
住宅業界とは、ハウスメーカーや工務店などの、注文住宅や分譲住宅といった戸建て住宅の設計、建築、販売を主としている業種のことを指します。主なターゲットは、個人顧客です。境目が曖昧なため、不動産業界、建設業界に分類されることもあります。
◇住宅業界の構造
住宅業界では、大手ハウスメーカーと年間施工数10棟未満で活動する多くの中小企業が存在しています。ただし、全国の新設戸建着工数のうち大手ハウスメーカー10社のシェアは約30%に過ぎず、残りの70%は地域の工務店が占めていることが分っています。
◇ハウスメーカーと工務店の違い
ハウスメーカーと工務店では、それぞれが得意とする建築手法や販売手法が異なります。
ハウスメーカーは、広告や住宅展示場などで集客し、商談を進めます。大手のハウスメーカーほど、全国各地で拠点を用意しているため、企業名を耳にする機会は多いでしょう。
建築手法は、工場で部材を生産し現地で組みあげる、ツーバイフォー工法などを採用しています。また、近年では住宅性能が重視される傾向にあるため、独自技術を用いた工法を採用しているハウスメーカーもあります。販売~施工~建築までのシステムが完成しているため、画一的なクオリティで建築が可能です。
工務店は、住宅展示場などの集客拠点は持っていません。工場もないため、建築手法は昔ながらの方法で、土台となる基礎工事から、柱や梁を組み合わせて建築する在来工法を採用しています。工務店の技量、職人の腕によって完成度が左右されてしまう反面、自由な建築が可能というメリットがあります。
◇ハウスメーカーの役割
東北の住宅業界へ転職・求人を探している場合は、ハウスメーカーの仕事内容は気になるところです。大きく分けて施工管理・設計・営業の3つにわけることができます。
ハウスメーカーは工事を委託する場合が多いため、施工管理は、新築住宅建設スケジュールが順調に進んでいるかを管理・監督する仕事内容です。
設計は、顧客の要望を踏まえて、具体的に図面を作成する職種です。図面作成には、スキルと知識が必要ですが、打合せで顧客の要望を聞き取るため、ある程度のコミュニケーション能力も必要とされています。
営業は、住宅建設のニーズを顧客から引き出しアプローチする必要がある職種です。契約を取って終わりではなく、要求を引き出すヒアリング能力、設計に正確に伝える能力など、コミュニケーション能力が特に重要とされています。
◇ハウスメーカーの現状と課題
ハウスメーカー業界は、国内市場規模の減少が課題です。少子高齢化とそれに伴う人口減少、コロナ禍の影響による資材高騰などが住宅業界に影響を与えています。少子高齢化と人口減少によって、そもそも新築住宅を希望している人が減っています。今後も人口減少が進むことを考えると、新築住宅以外の取り組みが必要です。
これらの課題に対し、ハウスメーカーはDX化、人材不足への対応、省エネ住宅の発展に取り組んでいます。IT技術を用いた住宅は、エネルギー効率が良く省エネで災害にも強いことから、今後の成長が期待されています。
土木・建設工事を幅広く行う建設業界
建設業界とは、住宅やビルの建設に限らず、道路や橋、ダムなどのインフラ設備を作る業種のことを指します。その中でも、道路や橋、水道などのインフラ整備にかかわる分野を土木、住宅やビル、公共施設の建設を建築と大別できます。規模の大きな事業に携わることができる業界です。
◇建設業界の構造
建設業界は、国、自治体、民間企業などの発注元からゼネコンへ仕事が発注され、必要な工事をゼネコンが下請けへ依頼する。という構造で仕事が行われています。
ゼネコン(general contactor)は、発注された事業のプロジェクト管理、工程や資材費の管理、安全管理を行い、下請け企業への仕事の発注を担当します。
下請け企業はサブコンとも呼ばれ、各々が得意とする分野の工事を担当します。
大まかな施工分野は、電気・空調・衛生・消防設備の4つに区分できます。
◇ゼネコンの種類と役割
ゼネコンとは、土木・建築関連の仕事を幅広くおこなう企業のことです。
年間の売上高(単独)が1兆円以上の企業をスーパーゼネコン、3000億円以上の企業を準大手ゼネコン、1000億円以上の企業を中堅ゼネコンと、売上規模に応じて呼び方が区分されています。
ゼネコンの主な役割は、発注された事業の施工管理です。工事自体はサブコンや関連企業に依頼し、工事全体を取り仕切る役割を果たしています。予算の見積もりや工事の進行を担当する場合もあります。
◇建設業界の現状と課題
現在、コロナ禍も落ち着いたことで着工数の増加は見込めていますが、業界内では技能工の減少と労働環境の厳しさが課題です。
技能工、つまり職人たちは、2021年時点で65歳以上が全体の約6分の1を占めています。
引退が近いこの世代から次世代への技術力の継承が課題となっています。しかし、人口減少に伴い、若い世代の業界への参入が少なくなっています。特に3K(きつい、汚い、危険)と称される労働環境の厳しさがその一因で、最近の若者がなかなか入らない状況です。
これらの問題への対応として、デジタルトランスフォーメーション(DX化)、リモートワークの導入、ICT化の推進が進んでおり、建設業界の今後の変革に期待が集まっています。
垣根が無くなりつつある住宅・建設業界
建設業界はインフラや施設を含む幅広い構造物の建造に携わり、住宅業界は個人向けの住宅建設と販売に焦点を当てていました。しかし、市場の変化に合わせて、建設業界、住宅業界の関係性は変わりつつあります。
◇建設業界と住宅業界の関連性
建設業界は、インフラ設備の建設、点検、管理を行い、人々が安全に暮らすためのインフラ設備を整える役割を担っています。
一方、住宅業界は、個人顧客の新築住宅をターゲットにしてきました。しかしながら、人口減少による需要低下に備えて、大手ハウスメーカーは商業施設の建設、賃貸管理などの建設業・不動産業に業務内容を広げています。ゼネコンも、注文住宅事業を担当し始めるなど、業界の垣根は薄くなっている状況です。
◇住宅業界のこれから
日本において、新築住宅着工戸数は2030年度に74万戸、2040年度には55万戸まで減少すると予想されており、国内市場の縮小がほぼ確実視されています。
そのため、海外の人口増加に目を向けた海外市場への進出、環境への配慮が注目されている中での省エネ住宅の需要増、高齢者向け住宅の開発など、新たな市場の開拓が必要です。
住宅業界は、ハウスメーカーや工務店などが注文住宅や分譲住宅の設計、建築、販売を主とし、主要なクライアントは個人顧客です。大手ハウスメーカーと多くの中小企業が存在し、大手のシェアは約30%で、地域の工務店が残り70%を占めています。
ハウスメーカーは集客と商談を広告や展示場で行い、工場で部材を生産して建築する一方、工務店は集客拠点や工場を持たず、伝統的な建築手法を採用しています。ハウスメーカーの役割には施工管理、設計、営業があり、業界は国内市場の縮小と人材不足に直面しており、省エネ住宅や新たな市場の開拓が求められています。
建設業界もまた、土木と建築に分けられ、ゼネコンが施工管理を担当し、下請け企業が工事を行います。技能工の減少と労働環境の課題が存在し、DX化やICTの活用が進行中で、住宅業界との境界が次第に曖昧になりつつあります。建設業界も環境への配慮や新たな市場の模索が必要です。