秋田・岩手・宮城の求人トレンドと地元で働きたい学生の声
2024/02/25
東北地域の求人状況を見ると、秋田県はやや回復傾向で新卒採用数の増加や就職決定率の上昇が見られます。岩手県では求人市場の持ち直しの動きが弱まり、正社員不足が深刻化しています。宮城県では求人数や転職希望者に変化は見られず、横ばいの状況が続いています。地域差異を踏まえ、東北地域全体の雇用状況の安定化に向けた取り組みが必要です。
秋田県の求人トレンドはやや回復傾向
近年、秋田県の求人トレンドは、やや回復傾向にあります。経済の不確定要因や人口減少の影響もある中、労働市場においては一定の持ち直しの兆しが見られます。特に、新卒採用数の増加や就職決定率の上昇など、一部の指標では前向きな動きがあります。
◇回復傾向にあるがやや足踏み
秋田県の求人市場は、2023年の10月における有効求人倍率が1.50倍と前月をわずかに上回っています。しかし、持ち直しの動きに足踏み感があり、物価上昇などの影響により一部で厳しさがみられています。
具体的には、企業の求人は前年同月比で減少しており、多くの業種で人手不足が続く一方で、物価や燃料費の上昇により人件費に経費を回せない事業主も増加しています。これらの要因が組み合わさり、求人市場の回復が一部で足踏み状態にあります。
今後も物価の高騰や最低賃金の引き上げなどの影響により、一部では厳しい状況が続くと見られています。このような状況で、企業と労働者双方にとって安定した雇用環境を築くためには、経済の安定化や労働条件の改善が求められます。
◇就職支援の強化
全国的に雇用が減少し企業が新卒採用を制限する中、秋田県では新卒求人数が増加し、就職決定率も上昇しています。
この背景には、ハローワークや地域団体の支援があります。特に、「新卒応援ハローワーク」では、全国の求人情報を検索できるサービスが提供され、自宅からもアクセスできます。さらに、エントリーシートや履歴書の作成方法の指導や模擬面接、心理的サポートも提供されています。
また、これまで新卒採用を行っていなかった企業や採用を一時中断していた企業に就職支援員が訪問し、求人の支援を行っています。就職支援員は主に人事労務や就職支援の経験者が担当し、中小企業とのマッチングや職業紹介、職場定着の支援も行っています。
これらの取り組みにより、秋田県では新卒の就職支援が強化され、求人トレンドがやや回復傾向にあります。
岩手県の求人は持ち直しの動きが弱まる
岩手県の求人市場は、持ち直しの動きが弱まりつつあります。経済の不透明感や人口減少の影響が指摘され、雇用の回復が一段と厳しい状況です。
◇持ち直しの動きは弱まる
岩手県の求人市場は、2022年度と比較して持ち直しの動きが弱まっています。有効求人倍率は前年を0.10ポイント下回る1.24倍となり、3年ぶりの低下が見られます。
産業別にみると、ほとんどの産業で新規求人が減少傾向にありますが、飲料・たばこ・飼料製造業やプラスチック製品製造業、情報通信業など一部の産業では増加しています。
これらの動向は、経済の不確定要因や物価上昇などの影響を受けており、引き続きこのような要因に留意する必要があります。求人市場の持ち直しを促進するためには、地域経済の活性化や産業の多様化が求められます。
◇正社員が不足している
東北6県企業の動向調査によると、東北地域全体で正社員の不足が深刻化しています。2022年1月の正社員の不足割合は54.9%(前月比1.6ポイント増)、非正社員も39.2%(同1.2ポイント増)です。新型コロナウイルスやウクライナ情勢、原材料価格の高騰、賃金動向などの要因が企業の雇用動向に不透明感をもたらしています。
特に正社員不足は販売の職業が37.5%で最も多く、専門的・技術的職業(32.1%)、事務的職業(23.2%)、建設・採掘の職業(23.2%)がそれに続いています。
全国で見た場合、社員の高齢化や2024年問題、海外技能実習生の入国制限の影響、DXなどが雇用を積極的にさせる要因として挙げられます。一方で、ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの影響により、雇用動向が再び落ち込む懸念もあります。
宮城県の求人トレンドは横ばい傾向が続く
宮城県における求人トレンドは、横ばいの傾向が続いています。経済の変化や人口動態の影響を受けながらも、求人数や転職希望者に大きな変化は見られず、安定した状況が続いています。
◇持ち直しから横ばい傾向へ
宮城県の求人トレンドは、持ち直しから横ばい傾向へと移行しています。前年度と比較して、県内の雇用失業情勢では求人が求職を上回っており、一定の持ち直しの兆しが見られますが、その動きは足踏み感があります。
特に、物価上昇などが雇用に与える影響にはより一層の注意が必要です。2023年の平均有効求人倍率は1.37倍で、前年と同水準です。産業別にみると、卸売業・小売業やサービス業は年々増加傾向にありますが、住宅業界や宿泊業、飲食サービス業などでは減少や横ばいが続いています。
このような傾向は、地域経済の変化や労働市場の構造変化に関連しており、引き続き課題解決に向けた努力が求められます。
◇東北での就職についての意識
東北地域における就職に関する調査から、多くの東北出身者が地元での就職を希望していることがうかがえます。
地元で働きたい理由として、慣れ親しんだ土地への愛着や地元への貢献意識が主に挙げられます。一方で、地元で働きたくない理由は、地元の経済環境や働き口の少なさが主な要因です。
また、東北以外出身者においては、東北での就職に否定的な意識が強く、生活環境や就職先の営業所の有無などがその理由として挙げられます。
こうした意識の違いは、地域の経済や社会環境の影響を反映しており、地域間の就職意識の違いに理解を深める必要があります。
東北地域の求人状況を分析すると、秋田県ではやや回復傾向が見られます。特に、新卒採用数の増加や就職決定率の上昇など、一部の指標では前向きな動きがみられます。
しかし、企業の求人数が前年比で減少しており、物価や燃料費の上昇による人件費の増加などが影響し、求人市場の回復には足踏み感があります。今後は物価の高騰や最低賃金の引き上げなどの要因により、一部で厳しい状況が続く見込みです。
一方で、岩手県では求人市場の持ち直しの動きが弱まっており、有効求人倍率の低下や産業別の新規求人の減少が見られます。正社員不足が深刻化しており、特に販売職や専門的・技術的職業、事務的職業、建設・採掘の職業でその影響が顕著です。
さらに、宮城県では求人数や転職希望者に大きな変化は見られず、横ばいの状況が続いています。地元での就職を希望する声が多く、地域経済や社会環境の影響が就職意識に反映されています。これらの地域差異を踏まえ、東北地域全体の雇用状況の安定化に向けた取り組みが求められます。