東北・住宅業界の現状と今後の見通しは?市場の動向を知って転職活動に役立てよう
2023/10/16
東北の住宅業界では、慢性的な人材不足や新設住宅着工戸数の減少といった課題を抱えています。今後の住宅業界は、省エネ住宅と中古市場の対応、海外展開に注力する方向に向かっていくことが大切です。
今回は住宅業界の現状や新型コロナウイルスによる影響、また今後の見通しについて解説します。
住宅業界の現状は?
新型コロナウイルス、ウッドショック、原材料の高騰など、住宅業界に対して影響を与える出来事が多くありましたが、その他にも、現状の住宅業界が抱える課題は数多くあります。
慢性的な人材不足
現在の住宅業界は、人材不足に悩まされています。この問題の原因を3つの観点から解説します。
若手の高い離職率
住宅業界、建設業界における若手の離職率は平均38%とされており、定着率は高いとは言えないでしょう。
建設業界は、きつい、汚い、危険の「3K」というイメージがあり、最近では、労働強度が高い、厳格な管理、長時間労働という「新3K」ともいわれるようになりました。
人手不足の原因には、労働環境や働き手の健康への意識が高まっている現代にそぐわない「3K」「新3K」の労働環境が考えられます。
経験豊富なベテランの引退
建設業界では、55歳以上のベテラン労働者が全体の30%以上を占め、29歳以下の若手は10%程度です。今後10年以内に、ベテラン層の大半は退職することでしょう。
それと同時に、多くのベテラン労働者が保持している資格や専門的なスキルも失われ、専門性を要する作業における労働力も不足していきます。
ベテラン層の引退により、人手不足はさらに深刻化する可能性が高いです。
労働人口の減少
建築業界に限らず、少子高齢化の影響により、労働人口は縮小傾向にあります。少子化対策を進んでいますが、将来的に増加する可能性は、ほぼ見込めないでしょう。
人口減少は避けられないため、労働環境の改善や外国人労働者の雇用、IT技術の導入による生産性の向上など、少ない人数で対応できるように、業界側も変わらなければいけません。
新設住宅着工戸数の減少
日本の人口減少の影響を受け、新規の住宅着工戸数も年々減少傾向にあります。
株式会社野村総合研究所の発表によれば、新設住宅の着工戸数は2030年度には70万戸、2040年度には49万戸にまで落ち込むとされています。
国土交通省が発表した2021年の新設住宅着工戸数が865,909戸であるため、住宅市場全体が縮小していくことは予想できます。
住宅業界は、少ない顧客を取り合うことになるため、サービスの向上や価格競争など、様々な戦略を取ることになるかもしれません。
出典元:
NRI「2040年度の新設住宅着工戸数は49万戸に減少、2040年の既存住宅流通量は20万戸に増加する見通し」
新型コロナウイルスが住宅業界に与えた影響
2019年から流行した新型コロナウイルスは、住宅業界に対しても様々な影響を与えてきました。特に外出自粛による集客と販売数の減少や、資材高騰などの影響で、住宅業界の働き方が変わってきています。
資材の入手難・高騰と工期の遅れ
住宅建設用の資材を提供する世界中のサプライチェーンで、工場の稼働制限や停止を余儀なくされ、住宅建設に使われる設備や資材の生産が間に合わないことが頻発しました。
その結果、工期遅延や引き渡しの延期が発生し、工事代金の回収が難しくなることもありました。
一旦の落ち着きを見せていますが、サプライチェーン全体への影響は残っており、先行きはまだまだ不透明な状況です。
集客の方法の変化
外出自粛の要請などにより、住宅展示場などの対面営業は避けられ、オンラインでの集客が注目されるようになりました。
現在では、オンラインでの内覧やバーチャル展示など、3Dモデルを使った完成図のイメージ確認など、非対面式の営業戦略を積極的に取り組む企業も出てきました。
なお、住宅展示場などは回復傾向にあります。withコロナやafterコロナの環境に合わせ、対面とオンラインをバランスよく組み合わせた営業戦略を考えていくことが重要でしょう。
住宅市場の販売は回復しつつある
外出自粛要請の解除、ワクチン接種などの対応により、コロナ禍が落ち着いて以降、住宅市場は回復しつつあります。特にコロナ禍において、リモートワークが定着したことも大きな要因といえるでしょう。
リモートワークにより家で過ごすことが増えた結果、住み心地のよい家を求めて、郊外に家を建てる需要が伸びています。
こういった状況は、新設住宅着工戸数が減少傾向にある住宅業界にとっては追い風とも考えられます。
住宅業界の今後の見通しは?
住宅業界の労働人口減少、新規戸建ての減少による市場縮小などが予想される住宅業界は、今後どうなるでしょうか?
省エネ基準適合の義務化
2025年以降、住宅を含むすべての新規の建物に省エネ基準適合が義務化されます。
そのため、ZEH(ゼッチ)やスマートハウスなど、省エネ・創エネを主軸とした建物の発展に期待が持てます。
今後、省エネ基準の適合はより厳しいものになっていきます。住宅業界での発展には、省エネ住宅への対応は欠かせないものになるでしょう。
ZEH(ゼッチ)
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、省エネ素材や創エネ設備の導入で、建物の総エネルギー収支をゼロに近づける仕組みのことです。
スマートハウス
IT技術を駆使してエネルギーを効率的に利用、省エネを実現する住宅のことです。
中古市場や海外事業の開拓
日本における新規住宅事業は縮小傾向にあるため、別事業を模索していく必要があります。重要となってくるのは、リフォームやリノベーションなどの中古市場と海外事業でしょう。
中古市場では、建築した住宅のアフターフォローやメンテナンスで、住宅の寿命を延ばし、住み継いでいくシステムを作ることが重要です。
住宅の寿命が延びるのは、建材の消費低減にもつながり、省エネが見込めます。いかにシステムを構築できるかが、今後のポイントです。
また、海外に目を向けると、米国や豪州、アジアでは人口増加に伴った住宅需要の増加が見込めます。厳しい点はありますが、日本企業にもまだまだチャンスはあるでしょう。
住宅業界は人材不足、新設住宅の減少、新型コロナウイルスの影響などの課題を抱えています。若手の高い離職率、ベテランの引退、人口減少が人材不足の要因です。新型コロナウイルスは資材入手難、工期の遅れ、集客方法の変化などに影響しました。
住宅業界が今後も発展していくためには、省エネ基準の義務化、中古市場や海外事業の開拓などに対応していくことが必要となっていきます。